はじめまして。
つながるデザイン研究所 研究員の大村です。
初回の投稿で緊張していますが、どうぞよろしくお願いいたします!
突然ですがみなさんは、バリアフリーとユニバーサルデザインの違いをご存じですか?
バリアフリーは、「障がいを持つ方の社会生活の障壁(バリア)になるものを除去する」という考え方です。
一方、ユニバーサルデザインは「年齢や性別、国籍、障がいの有無に関係なく、より多くの人が快適・安全に利用できるよう配慮してデザインする」という考え方です。
似た言葉ですが、
- 対象を障がいを持つ方に限定するか/しないか
- バリアを除去するか/最初から生まないようにするか
という点が異なります。
高齢者や障がいを持つ方だけでなく、すべての人の移動を快適にするエレベーターは、ユニバーサルデザインの代表例としてよく取り上げられます。
そんなエレベーターですが、みなさんは「ひらく」を押そうとして、とっさに「とじる」を押してしまった経験はありませんか?
…私はあります。
会社の新人女子をはさむ、いじわるな先輩になってしまいました…。
間違えるたびに相手に申し訳ない気持ちにはなるものの、深くは考えてきませんでした。
しかし、ユニバーサルデザインの代表例であるエレベーターのこと、実はボタンにも何かしらの工夫がされているのではないか、と考えるようになりました。
そこで今回は、エレベーターの開閉ボタンを、ユニバーサルデザインの観点から見ていくことにしました。
1.調査方法
開閉ボタンのサンプルを収集・分類し、「ひらく」ボタンの視認性(目で見たときの確認のしやすさ)を調査
収集地域:東京・大阪・兵庫・埼玉・千葉・栃木・福島
サンプル数:52件
2.分類結果
(1)「◀▶」(37件)

内外に向く三角形で表された矢印。7割がこのパターンでした。
シンプルで狭いスペースにも使用しやすく、広く認知されているデザインです。
ただ、上の画像は、「これは開閉ボタンである」という認識はしやすいですが、形がよく似ているため、どちらが「ひらく」なのか、とっさには識別しにくいです。
サンプルの中でも、このようなシンプルなデザインはごくわずか(5件)で、それ以外は次のように様々な工夫がされていました。
「◀▶」+緑色 (27件)

「ひらく」のみ緑色になっています。
緑色が目を引き、「ひらく」を識別しやすくなっています。
「◀▶」+変形 (13件)
「ひらく」の方が大きく作られているパターンです。
こちらも直感的に「ひらく」を識別しやすくなっています。
形のバリエーションは複数ありました。
<幅広のもの>

<上下に大きいもの>

「◀▶」+文字併記 (18件)

「ひらく」「OPEN」などの文字を併記するパターンです。
「◀▶」マークは、認知度は高いものの、すべての人が同じように認識できるとは限りません。マークの識別が苦手な人にとって、文字情報は助けになります。
(2)「開」「閉」(1件)

予想以上に少なく、1件という結果でした。
「開」「閉」は字形が似ており、識別しにくいですね。
子どもや外国の方にはさらに難しいはずです。
(3)矢印 (5件)

続いては矢印のパターンです。
「◀▶」と似ていますが、よりシンプルで洗練されたデザインです。
しかし、視認性の点からいうと、全体の線が細いため視力の弱い人には見えにくい可能性があります。
今回は、オーソドックスなパターンをご紹介しました。
サンプルでは、「ひらく」ボタンの視認性の方が高いものが多くみられました。このことから、「ひらく」ボタンの利用シーンがより重視されているといえそうです。
次回【後編】では少し変わったパターンをご紹介します。 是非ご覧ください!