こんにちは。
エレベーターの開閉ボタンからユニバーサルデザインを考える・後編です。
今回は少し変わったパターンをご紹介します。
前編がまだの方は、こちらもご覧ください。

1.分類結果(続き)
(4)「ひらく」に人のイラスト (3件)

「ひらく」に人のイラストが描かれています。
上のサンプルでは要素がつまっているため、少し見にくく感じますが、「人がいる➝ひらく」という連想がしやすいため、見せ方次第ではわかりやすいデザインになりそうです。
(5)「ひらく」にのみ文字併記 (2件)

「ひらく」にのみ文字を併記したパターンです。
これでもかというくらい、「とじる」が存在感を消しています。
(6)「とじる」にカバー (4件)

「とじる」ボタンにカバーがついています。非常呼出ボタンについているのはよく見かけますね。
これまでのサンプルは、「ひらく」ボタンをいかに目立たせるか、という視点でのデザインだったのに対し、こちらは「とじる」ボタンを物理的に押しにくくしています。
ボタンが並んでいる以上、デザインだけで押し間違いをゼロにすることは難しいと思います。
(「とじる」ボタンをなくしてしまえば解決ですが、別の問題が出てきそうです…)
このデザインであれば、ボタンの配置はそのままで、押し間違いを防ぐことができそうです。
2.開閉ボタンからユニバーサルデザインを考える
開閉ボタンのサンプルから、様々な工夫がされていることがわかりました。
そして、デザインの中に次のようなユニバーサルデザインの視点を見つけることができました。
① 利用者目線でデザイン設計をしている
きれいに統一されたデザインの方が、見栄えはいいかもしれません。
しかし、ほとんどのサンプルが、「ひらく」の方に注意が向くよう、あえて不統一にデザイン設計されていました。
これは、見栄えの追求だけでなく利用者目線でデザイン設計するという、ユニバーサルデザインの考え方の表れといえます。
② 複数の要素で補完している
前編の「◀▶・ ▶◀」のパターンでは、マークに加えて色や形、文字で補完していました。
情報は、シンプルな方が伝わりやすくなります。
しかし、場合によっては複数の要素で補完することで、より多くの人に伝えられるようになります。
③ 重要度の低い情報は、思い切って削ぎ落とす
「とじる」の情報を出さない、または物理的に押しにくくさせているサンプルもありました。
重要度の低い情報は思い切って削ぎ落としてみると、本当に伝えたい情報が伝えやすくなることがあります。
これらは開閉ボタンだけの問題ではなく、私たちが日常生活や仕事において相手に何かを伝える上でも役立つ視点です。
コミュニケーションが円滑にいっていないと感じたときは、これらを実践してみることでうまくいくかもしれません。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
エレベーターなどの公共性の高いものからは、コミュニケーションのヒントを多く発見できます。それは、不特定多数が利用するものだからこそ、様々な利用シーンを想定し、メッセージを直球で届けられるよう設計されているためです。
私は、日常の「なぜ?」から、コミュニケーションデザインへの理解は始まると考えています。
今はまだ自由に出歩くことが難しいですが、街なかにあるコミュニケーションのヒントを、今後も随時ご紹介していきたいと思います。