2026年4月1日、食品表示基準が改正され、これまでアレルギー表示推奨だったカシューナッツが、アレルギー表示義務のある「特定原材料」へと移行。あわせて、ピスタチオが表示推奨のリストに加えられました。これにより、表示対象はそれぞれ「義務:9品目」「推奨:20品目」へと更新されました。
アレルギーの問題は、当事者や家族以外の方にはなかなか意識する機会がないかもしれませんね。
しかし、この改正の背景には、私たちの「情報の捉え方」を見直すべき重要なヒントが隠されています。
今回は、ピーナッツとナッツ類の違いを一つの例に、情報伝達の大切さについて考えてみたいと思います。
1. アレルギー表示とは
食品パッケージに記載されるアレルギー表示は、その重症化リスクや症例数に応じて2種類に分類されます。
(1)特定原材料(義務表示:9品目)
重症化のリスクがあり、症例数が多いもの。少量でも必ず表示する必要がある。

(2)特定原材料に準ずるもの(推奨表示:20品目)
症例数はあるが特定原材料より少ないもの。可能な限り表示するよう推奨されている(努力義務)。

今回の改正により、表示対象に含まれるピーナッツ・ナッツ類は計6種(義務表示:ピーナッツ(落花生)、くるみ、カシューナッツ/推奨表示:アーモンド、マカダミアナッツ、ピスタチオ)となり、近年のアレルギーリスクの高まりが反映されています。
2. 「ナッツ類」という言葉の罠 ― ピーナッツはナッツ類ではない!
ここで、アレルギー対応において非常に重要な「情報の分類」について触れたいと思います。「ナッツ類」とひとくくりにしてしまいがちな「ピーナッツ(落花生)」ですが、実は地中で育つ豆類のマメ科に属しており、樹木の果実・種子であるナッツ類の仲間ではありません。
「名前に「ナッツ」が付くのにナッツ類ではないの?」と不思議に思われる方もいるかもしれません。「ピーナッツ」の由来は、英語で「豆」を意味する「pea」と「木の実」を意味する「nut」を組み合わせた言葉です。豆類(マメ科)でありながら、ナッツのような風味や食感を持つことから名付けられました。
余談ですが、Official髭男dismのヒット曲『ミックスナッツ』(作詞・作曲:藤原聡)では、周囲と調和しながらも拭えない異質さを抱える「僕ら」の姿を、ナッツの袋の中に紛れ込んだピーナッツに重ねて描いています。 ピーナッツとナッツ類の違いを知ったうえで改めてこの曲を聴くと、歌詞の端々に込められた比喩の巧妙さに、きっと新しい発見があるはずです。
ぜひ聴いてみてください♪
3. 「正しく知る」と「正しく伝える」が、安心の土台になる
アレルギーの話に戻しましょう。
見た目はそっくりでも、ルーツが全く異なるピーナッツとナッツ類。 「ピーナッツアレルギーだからナッツもすべてNG」とは限らないし、その逆もまた然りです。
さらにナッツ類の中でも、アーモンドはバラ科、クルミはクルミ科といったように「科」レベルでの違いがあるため、ひとまとめにせず個別の慎重な判断が欠かせません。
大切なのは、消費者の私たちが「ナッツ」という総称だけで判断せず、その中身を正しく理解しようとすること。そして食品メーカーをはじめとする情報の送り手が、その境界線を曖昧にせず、消費者が迷うことなく、確かな安心を持って手に取れる「情報の伝え方」を形にしていくことだと考えます。
この「情報の伝え方」を具現化する試みとして、以前、一つのプロトタイプを作りました。 母子手帳に掲載することを想定した「アレルギー食品 離乳食管理表」の提案です。この試みは、UCDAアワード2023において、「みんなのピクトを活用したコミュニケーションツールコンテスト」の実行委員長賞を受賞しました。

※内容は2023年6月時点のものです。
【ニュースリリース】UCDAアワード2023において、「みんなのピクトを活用したコミュニケーションツールコンテスト」の実行委員長賞を受賞しました。https://www.kenbunsya.jp/2023/11/16/20231116/
食物アレルギー表示のためのUCDA認証ピクトグラム「みんなのピクト」を用いることで、これまでアレルギーと無縁だった親御さんでも、アレルゲンを直感的に見分け、試した日付を記録できるように設計しました。そして、いざという時に医療機関や保育施設と「正確な事実」を共有するための、コミュニケーションツールとして機能することを目指しました。
UCDA認証ピクトグラム「みんなのピクト」https://ucda.jp/research/minnano_picto.html
4. まとめ
今回は、アレルギー表示の改正をテーマに、情報の伝え方について考えました。記事を書く中で改めて感じたのは、消費者が「正しく知る」ことの大切さと、情報の送り手があいまいさを排除して「正しく届ける」ことの責任です。
法律で決まったから表示を直すという「義務」の先にある、「迷わせない、間違わせない」という優しさのデザイン。
今回の法改正を機に、より安心できる情報発信のあり方を、これからも真摯に突き詰めていきたいと考えています。
【参考資料】
消費者庁「食品表示法に基づく食品表示基準の一部改正に係る消費者委員会への諮問について」
福岡市立こども病院「ナッツ類&ピーナッツ」
食物アレルギー研究会「種実(ナッツ)類アレルギー」
Ton’s Café「意外と知らない「ピーナッツ」と「ナッツ」の違いについて」
https://www.tons-cafe.jp/lifestyle/trivia/nuts-entry-293.html
【食物アレルギーに関するご注意】
本記事は、情報の整理・伝達手法の紹介を目的としています。個々の症状に対する診断や食事療法等の具体的な対応については、必ず専門医の指導に従ってください。本記事の情報に基づいた判断により生じた損害について、当社は責任を負いかねます。
【離乳食管理表の取り扱いについて】
第4章で紹介した「離乳食管理表」は、情報の仕分けと視覚的なわかりやすさを検証するためのコンセプトモデル(試作案)です。医師や管理栄養士等の専門家による医学的監修は受けておりません。実際の離乳食進捗管理に利用される際は、自治体や医療機関が発行するガイドラインをご参照ください。


