みなさん「点字」というものの存在はご存知だと思います。
そして、点字がどういう用途で使われているのかも、多くの方がご存知だと思います。
しかし、点字が読める人というと少し話が変わってきます。
多くの方は、点字のことを知っていても、点字を読むことができません。
別の言い方をすると、社会は点字に関心を示していても、点字を読むことにはあまり関心を持っていないのかもしれません。
そして、私も最近までその一人でした。
本稿では、そんな点字について多くの方に関心を持っていただきたく、コミュニケーションデザインの観点から点字について考える機会にしたいと思います。
全3回のうち、今回はまず点字の基本について一緒に学んでいきましょう。
目次
1 点字の歴史
現在使われている点字を発明したルイ・ブライユ
現在世界中で広く使われている6点点字は、1825年、フランスのルイ・ブライユによって発明されました。
ルイ・ブライユは幼い頃に事故により失明しました。
ブライユはパリ盲学校に入学し、フランス軍の士官であったシャルル・バルビエが戦場での夜間の暗号として考案した12点点字のことを知り、たいへん興味を持ちました。
好奇心旺盛なブライユはバルビエの12点点字を習得したのち、これを改良し、縦3・横2の6点点字を新たに発明しました。
ブライユはこのときまだ14歳だったので驚きです。

日本語の点字を考案した石川倉次
ルイ・ブライユの6点点字を基に、現在国内で使われている日本語点字を考案したのが石川倉次です。
1887年(明治20年)当時、東京盲唖学校の教諭だった石川は、当時アメリカで使われていたアルファベット体系の6点点字を、日本語に適用させる研究の中心人物として活躍しました。
そして、1890年(明治23年)11月1日に開催された点字選定委員会で、石川案の採用が決定されました。
そのため、11月1日は「日本点字制定記念日」となっています。

このように、現在使われている点字はおよそ200年の歴史があり、日本においても100年以上の歴史があります。
2 点字の仕組み
点字は、縦3・横2の6つの点でできていて、指先で触れたときの触感が異ならないように、6つの点は大きさや間隔が図のように規定されています。

文字の表し方には法則があり、①~⑥の点で50音の母音(段)と子音(行)を組み合わせて表現します。ローマ字の考え方によく似ています。 まず、下図の「ア・イ・ウ・エ・オ」が基本となります。これが母音(段)です。

ここに子音(行)の点を組み合わせます。

すると、このようになります。


ただし、ワ行とヤ行は例外となります。 ワ行は、母音(アイエオ)を、形を崩さずに一番下に下げます。

ヤ行は、母音(アウオ)を形を崩さずに一番下に下げ、④の点を加えます。

これ以外に、撥音(ン)、促音(ッ)、長音(ー)もあります。

また、濁音(ガギグゲゴなど)や半濁音(パピプペポ)は2マスを使って表記します。

拗音(キャ キュ キョ など)、拗濁音(ジャ ジュ ジョ など)、拗半濁音(ピャ ピュ ピョ)のように小さい「ャ ュ ョ」を使う文字は拗音符、拗濁音符、拗半濁音符を用いて2マスで表現します。

これで、50音すべてを点字で表現することができました。
他にも英数字や記号もありますが、まずは50音の基本を知っただけで、点字が少し身近なものに感じたのではないかと思います。
3 点字のルール
点字には、晴眼者(目の見える方)が普段使っている墨字*とは異なるいくつかの表記・表現のルールがあります。
そのうちの特徴的な2つを紹介します。
* 墨字(すみじ): 点字に対して、紙に書かれた文字や、印刷された文字のこと
点字は読み(音)を文字で表す
点字は墨字とは異なり、音声を発音どおりに表現します。たとえば「お父さん」は墨字のひらがなで表現すると「おとうさん」ですが、点字では「オトーサン」と表現します。

同様に「明日は晴れ」は「アシタワ ハレ」、「学校へ行く」は「ガッコーエ イク」、と表現します。

なぜ、ワとハ、エとイの間に空白が入っているのかは、このあとで説明します。
文節の区切りに空白を入れる(分かち書き)
点字は漢字を使わずにカナだけで表現するため、正しく読んで理解するために、文節を区切って表現します。これを「分かち書き」といいます。 たとえば、次の文章を分かち書きせずに表現すると、こんな風になります。

元の文章がなければ、何が書かれているか理解するのに時間がかかると思います。
これを分かち書きすると、こんな風になります。


どうでしょう、かなり読みやすくなったと思います。
分かち書きの仕方ですが、「ね」を入れながら読むと区切る位置がわかりやすくなると思います。

点字で表現するときの特徴的なルールを2つご紹介しました。
点字がどんなルールで書かれているのかを知ることで、さらに点字に興味を持っていただけたのではないかと思います。
まとめ
今回は、点字の基本を一緒に学びました。
今回の説明だけでは、すべての点字を読むことはできないし、「あれっ、意外と簡単」と思った方も、目で見て読むのではなく触って読むとなると、それは一苦労だと思います。
でも、どうでしょう、点字のことを少し知ると、身の回りの点字にいったい何が書かれているのか気になり始めたのではないでしょうか。
次回は、身の回りにある点字を探して、実際に何が書かれているのか一緒に読んでみたいと思います。 そして、点字に関わる課題についても一緒に考えてみたいと思います。