前回の記事に引き続き、電動車いすとユニバーサルデザインについて考察いたします。
前回の記事の最後に、車いすユーザーの人も、そうでない人も乗ることができる近距離モビリティ「WHILL(ウィル)」をご紹介いたしました。
〈前回の記事〉
今回は、WHILL株式会社さまのご厚意により、実際にウィルに試乗させていただくことができましたので、レポートいたします。
ウィルとは
ウィルは、車いすユーザーの人も、そうでない人も乗ることができる、 乗ってみたいと思える、まったく新しいカテゴリーの一人乗り用のモビリティ(パーソナルモビリティ)です。
WHILL社は、同社の創業メンバーが出会ったある一人の車いすユーザーの、「100メートル先のコンビニに行くのをあきらめる」という言葉に突き動かされ、「すべての人の移動を楽しくスマートにする」というコンセプトの下、開発をスタートしました。
2011年の東京モーターショーでコンセプトモデルを発表、そして、2014年にModel Aが製品化されました。
WHILL Model Aは高いデザイン性と新規性が評価され、2015年のグッドデザイン大賞を受賞しました。
現在は、Model C2を筆頭に、よりコンパクトな折りたたみタイプのModel F、ハンドル型のModel Sの3車種がラインナップされています。
ウィルは法律上では「歩行者」のカテゴリーに当てはまります。
最高速度は時速6キロメートルで、運転免許は不要で年齢制限もなく、誰でも運転することができます。
ウィルに試乗
今回試乗したのはModel C2です。
Model C2は、ウィルのさまざまな技術を盛り込んだ最上級モデルです。
では、試乗いたします。
まずはシートに腰掛けます。とても座り心地のいいしっかりとしたシートです。
私は前方のステップに足をかけて前方から腰掛けましたが、下肢が不自由な方は、アームレストを跳ね上げて側方からシートに腰掛けることもできます。
速度は時速6キロメートルを上限に、4段階で調整することができます。
運転操作は、手元のレバーで行います。レバー操作は簡単で、レバーを前に動かせば前進、後ろに動かせば後退、左に動かせば左折、右に動かせば右折です。行きたい方向にレバーを倒すだけで自由自在に動かせるので、初めてでも直感的に運転できます。
最初は少しぎくしゃくしましたが、慣れるとあっという間にウィルを自由に動かせるようになりました。
レバーから手を離すとブレーキがかかる仕組みになっているので安心です。
Model C2は、オムニホイールと呼ばれる横方向にも回転する特徴的なタイヤのおかげで、その場で旋回することができます。最小回転半径は76cmです。これはエレベーターの中や店内などの狭い空間では、とても便利な機能です。
また、このオムニホイールと高出力のモーターで、最大5cmの段差でも乗り越えることができます。
後輪にはサスペンションが装備されているので、乗り越え時の衝撃も吸収されます。
Model C2は、分解することができるので、自動車に積んで移動することもできます。
ただ、重量が重いため、頻繁に自動車に積む用途がある場合は、軽量でコンパクトに折りたためるModel Fの方がいいと思います。
折りたたみ操作もとても簡単で、大きな力を必要としないので、これなら力の弱い高齢の方でも折りたたむことができそうです。
所感とまとめ
昨年11月、東京ビッグサイトで開催されたジャパンモビリティショーのWHILL社ブースで、自動運転モデルのウィルに試乗させていただきました。自動運転のウィルは安全のため、速度が低く設定されているとのことでした。
今回、実際に自分で運転してみて、少し驚いたのは最高速度の時速6キロメートルが、「思いのほか早いな」と感じたことです。
もちろん原付バイクや自転車とは比になりませんが、歩行の代替手段として考えた場合、まったくストレスのないスピードだと感じました。
このスピードならちょっと近くのコンビニに行きたいけど、歩くのが面倒といったときに使うとかなり便利そうです。
ただ、いざ使うとなると、歩くことができる自分がウィルを使うことに対する後ろめたさのようなものや、周りの目が、どうしても今はまだ気になってしまうのが正直なところです。
コンビニで偶然に友人に出会ったとしたら、おそらく友人も「どうしたの、何かあったの」と、ウィルに乗る私を気遣うのではないかと思います。「いいな、買ったの、便利そうだね」とは、今はまだならないような気がします。
今回、ハンドルタイプのModel Sには試乗しませんでしたが、Model Sなら使うことに対する心理的なハードルも、もっと低くなるかなと思いました。
次回は、WHILL社 日本事業部 上級執行役員 事業部長の池田 朋宏様にインタビューをさせていただきましたので、その内容をご紹介いたします。